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東京高等裁判所 昭和59年(ラ)36号 決定

抗告人

岡田佐知子

右代理人

高見澤昭治

高橋利明

田岡浩之

相手方

豊田商事株式会社

代表者

永野一男

主文

原決定を取り消す。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は、別添抗告状写の該当部分記載のとおりである。

本件記録によると、(一) 抗告人の本件仮処分命令申請に対し、昭和五八年一二月九日(同月一〇日告知)、保証金供託決定がなされ、(二) これに対して、抗告人は、同月一七日、抗告したところ、(三) 右抗告に対する抗告審の判断がなされないうちに、同月一九日、原決定がなされたことは明らかである。

当裁判所は、仮処分保証金供託決定に対し、抗告することは許され、右抗告の性質は即時抗告であると解する。したがつて、これに対する抗告審の判断がなされないうちに、決定の定める期間内に供託しないことを理由として仮処分申請自体を却下することは、違法といわなければならない。よつて主文のとおり決定する。

(杉山克彦 武藤春光 寒竹剛)

〔抗告状〕

右抗告人を債権者、相手方を債務者とする東京地方裁判所昭和五八年(ヨ)第二〇六七号書類閲覧等仮処分申請事件につき、昭和五八年一二月一九日、同裁判所がなした却下決定は不服なので抗告する。

〔抗告の趣旨〕

原決定を取消す

との裁判を求める。

〔抗告の理由〕

一、原裁判所は債権者からの前記仮処分申請につき、昭和五八年一二月一〇日、保証金額を二〇〇万円として仮処分決定をなし、債権者(抗告人)代理人は同日、その旨の告知を受けた。

二、債権者は右保証決定を不服として同年一二月一七日即時抗告をなし、(昭和五八年(上訴)第八七号)、同事件は東京高等裁判所民事第一一部に係属し、現在も係属中である(昭和五八年(ラ)第六〇六号)。

三、しかるに原裁判所はこれを無視し同年一二月一九日前記のとおり申請を却下するとの決定をなした。これは以下の理由により違法であるので取消を求めるものである。

(一) 保証決定に対し独立に即時抗告ないし通常抗告が許されるか否かについては積極説、消極説があり判例は積極説をとつている。

(二) しかしながら仮りに保証決定に対し独立の抗告が許されないという見解に立つにしても抗告が申立てられた以上、原裁判所は抗告を不適法ないし理由がないとの意見を付して抗告裁判所へ送付しなければならず(民事訴訟法四一七条二項)、これによつて事件は抗告裁判所に移審する(新堂幸司・民事訴訟法五七七頁)はずのものである。

(三) 従つて原裁判所が抗告の申立てがあつたにもかかわらず、自から更正もせず、抗告裁判所に移送もしなかつたことの違法は明らかであり、従つてまた抗告の存在を無視して仮処分申請事件を却下したことは、本来であれば係属していない事件について判断したことになり二重の違法を犯したことになる。

四、前記のとおり保証決定に対する抗告事件は適式に東京高等裁判所に係属している。これについての判断を得るにも違法に存在している原審の棄却決定を取消す必要がある。

五、よつて本申立に及ぶ。

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